安堂ホセさん=日本文学振興会提供(岩澤高雄撮影)
第172回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日開かれ、芥川賞に安堂ホセさん(30)の「DTOPIA」が決まった。安堂さんは、デビュー作から3作連続で候補入りし、「3度目の正直」で芥川賞を射止めた。
芥川賞に選ばれた安堂ホセさんの「DTOPIA」=15日午後、東京都千代田区(斉藤佳憲撮影)
一貫して小説に書いてきたのは、ミックスルーツや性的マイノリティーの当事者たち。「日本語で書かれている小説のほとんどは居心地が悪い」という思いを抱えてきた。自身を作品に重ねて語ることはないが、「創作は自分が好きなものを書くのが一番素直だと思うので、それをやっている感じです」と明かす。
恋愛リアリティーショーを舞台にした受賞作では、「なんか男と女ってめっちゃケンカするよね」といった、異性愛者に対する「雑な偏見」をあえて書きこんだ。
ただ、自身が小説というハイカルチャーによって立つことは常に意識している。「マジョリティーへの風刺と、ポップカルチャーへの見下しを一緒にしたくない。リアリティーショーの参加者も生きるために頑張っている。彼らの魅力を対等に見てみたかった」
芥川賞を受賞しても、純文学に対する見方は冷ややかだ。「詩っぽくなったり、方言が入ったりすると喜ぶのに、政治的なプロテスト(抗議)があるとすごく動揺する。それっておかしくないか」と問題提起する。
「街でプロテスト活動をしている人たちは宇宙人じゃない。現実にあることだし、小説に入れても大丈夫じゃないかと思います」(村嶋和樹)